Nightwishというフィンランドのシンフォニックメタルバンドがあります。
シンフォニックメタルというジャンルの代名詞とさえ言えるほどのバンドで、このジャンルがあまりメジャーではない日本では一部でしか知られていませんが、世界のミュージックシーンに与えた影響はあまりに絶大なものです。余談になりますが、日本以外ではシンフォニックメタルをはじめとするメタルミュージックとファンタジィは非常に親和性が高いとみなされており、多くのミュージシャンがファンタジィ小説に影響された曲を生み出しています。Nightwishも例外ではなく、懐かしの「ドラゴンランス戦記」などに触発された曲もあったりします。
Nightwishのコアメンバーは一種の天才としか言いようが無い才人、キーボードのツォーマス・ホロパイネンで、彼がほとんどの曲を書いているのですが、一般的にバンドの人気の要因となったのは初代のボーカリスト、ターヤ・トゥルネンでした。彼女のオペラチックな歌唱と存在感は今考えても神がかったものがあり、そのラストライブで歌った名曲「Ghost Love Score」などは絶唱といっていいでしょう。
しかし彼女はバンドメンバーといさかいを起こし(原因はいろいろ取り沙汰されていますが、はっきりしたことはわかりません)、バンドを去りました。その後別のボーカルを連れてきましたが率直に言ってぱっとせず、Nightwishも終わったかと思われましたが、三代目のヴォーカリストとしてフロール・ヤンセンを起用したことでバンドは完全に蘇りました。190cm近い長身とその体躯に見合ったパワフルなパフォーマンス、そしてターヤばりのオペラチックな歌唱もこなす彼女ですが、意外なところではゲーム「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」のオープニングテーマ「カゼノネ」をカバーしたこともあるそうです。
さて前置きが長くなりました。
Nightwishの最新のアルバム「Endless Forms Most Beautiful」は今年発表されたばかりのものですが、このアルバムはそのタイトルを進化論で知られるダーウィンの著書「種の起源」の結びの言葉から取っており、「生命の起源と進化」をテーマとした非常にメッセージ性が強い壮大なものとなっています。
その結びの曲が「The Greatest Show On Earth」です。「地球上で最も偉大なショー」とでも訳せばいいでしょうか。このタイトルはイギリスの進化生物学者リチャード・ドーキンスの著書のタイトルから取られています(日本では「進化の存在証明」という味も素っ気もないタイトルで出ています)。5章構成の24分に及ぶ大曲で、生物が誕生し、進化し、そして今生きている我々に至る道程を歌い上げています。
この曲、歌詞カードを見ながら聴くだけでも素晴らしいのですが、最近この曲について解説したサイトを見つけてあたしは大変な衝撃を受けました。
http://hatoking.com/blog/journal/1249.html
このサイトなのですが、歌詞カードでは欠落しているナレーションの訳まで載せてあります。それで知ったのですが、ナレーションをやっていたのはリチャード・ドーキンスその人だったのだそうで…生物学者の本をタイトルとし、その本人を呼んできて語らせるようなミュージシャンなど聞いたこともありません。
そしてこのサイトで紹介されている訳があまりにも素晴らしいのです。ああ、こういうことを言いたいが為の曲だったのか、と。あのナレーションの意味がわからなければ、この曲を理解したとは到底言えなかったのです。
そして、この歌こそが。
多分この文章を読むことなど無いのでしょうが、一年前に訣別したかつてのあたしの友達への、最後の答えになると思いました。
生命は引き継がれ、受け継がれて今の我々に至るのだと。
我々は決して無意味な存在ではないのだと。一個人、一個体が強いとか弱いとか、そんなことはどうでもいいのだと。
訳詞の素晴らしさは先に紹介したサイトを見て頂くとして、強く印象に残った部分だけを引用させてもらってこの文章を終わりにしようと思います。あたしがこまごまと書き連ねるより、よほど雄弁に語ってくれるでしょうから。
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「数十億年もの眠りを経て私たちは遂に目覚め、極彩色に輝き、命に溢れた大いなる惑星を目の当たりにする。そして数十年もすれば再び目を閉じるのだ。大陽の下で過ごせるこの短い時間を、世界の仕組みや、私たちがどのようにしてここで目覚めるに至ったかの思索に費やすのは聡明で気高い事だと思わないか?」
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私たちはひとつ
私たちは世界を成す
やがて産まれくる者達の祖先であり
デボン紀の海を泳いだ者達の末裔
果てしなく長い時間が過ぎ
全ての生命の物語を描いてゆく
日毎に新たな幕が上がる
この地球で最も壮大なショー
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数十億年が過ぎ
ショーはまだ続いている
お前の父は誰一人 幼くして死ぬ事はなかった
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空想を産み
偶像を産み
人をも滅ぼす兵器を産み
信仰にすがり付く
深く遠い過去から覗く
原始的な狩られる恐怖
イオニアの時代 哲学の始まりへ
知識を司る神殿
人は他の種とは違う力を渇望した
地球を統べる力を
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人は、太陽の下で生きた
たとえ砂の一粒でも
真理を知りたいと夢見た
人は詩を産み出した
しかし やがてそれも終わる
図書館に灯った最後の明かりを目にする
人はここに存在していた
私たちはここに存在していた
私たちはここで生きていた
私たちはここで生きていたんだ
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「私たちはやがて死ぬ。これは幸運なことだ。ほとんどの人間は産まれる事ができず、故に決して死ぬ事がないのだ。この地球に存在する可能性があったにも関わらず結局太陽を見る事ができなかった人間の数は、サハラ砂漠の砂粒の数よりもずっと多い。これらの産まれる事のなかった亡霊達の中にはきっと、キーツより偉大な詩人、ニュートンより偉大な科学者もいただろう。私たちのDNAから考え得る人間の可能性は、実在する人間達を遥かに凌駕しているのだから。こういった驚異的な確率の結果が貴方であり、私であり、今ここに在る凡庸さなのだ。私たちはとてつもなく低い確率から誕生という幸運を引き当て、特権を得た数少ない存在だ。他の大多数が踏み込む事さえできなかった地から元いた所へ還る不可避の日を、どうして嘆く必要があるだろう」
14 年前
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