「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」が毎週楽しみて楽しみで仕方がない今日この頃です。この作品はこのままいけばアニメ史上に残る傑作になるのではないか、とさえ思っていたりします。
 何から書いていいやら迷いますが、まあ今のところ非の打ち所がない作品なのではないでしょうか。脚本、演出、キャラクターや舞台の設定、お話、そしてメカの動きや戦闘に至るまで、ここまで高レベルで揃えたテレビアニメなどそうそうあるものではありません。どんな作品にも大抵穴はあるものですが、この作品の場合今のところ穴らしい穴が無いので、この先どうなるかが不安になるレベルです。


 お話の中味や設定についてはまだ序盤ということもあるので語るのはやめておきますが、キャラクターの性格付けや人間関係について見てみても非常によく考えられた作品だということが分かります。中でも唸らされたのが、主人公達のリーダー格であるオルガ・イツカという少年です。
 当初、設定とキャラクターデザインを見ただけの段階では、いかにも途中で影が薄くなるか裏切るかしそうな「リーダー気取り」の少年かと思いましたがとんでもない。彼ほどにキャラクターとして巧みに描かれた「リーダー」というのも珍しいでしょう。この少年は恐らく天性のものであろうカリスマ性と行動力、勘の良さを持ち、かつ抜群の勝負度胸と勇気をも備え、仲間たちをその言葉と行動で鼓舞しつつ導いていくのですが、その度胸や勇気の源泉について、彼自身はこう述懐します。


「あの目は裏切れねえ。あの目に映る俺は、いつだって最高に粋がってて、カッコいいオルガ・イツカじゃなきゃいけねえんだ」


 主人公であり彼の盟友である三日月・オーガスの視線を、オルガはいつも意識しています。
 一方で三日月は、「難しいことはよくわからない」「オルガがちゃんとしてくれるだろ」と言いつつ、オルガの指示を的確にこなしていきます。自ら何かを判断するということはほとんどありません。
 一見これは、三日月がオルガに依存し、判断を預けており、オルガは三日月を駒として利用しているだけのようにも見えます。しかし二人の関係はそんなに単純かつ一方的なものではないようなのです。
 恐らく、二人はお互いをほとんど絶対的なまでに信頼しているのです。先の述懐の前に、オルガは「三日月は凄い奴だ」と口にしています。彼は三日月を、実際に前線に立って戦う者としては自分などより遥かに上だとその能力を信じているのでしょう。一方で三日月は、何かを判断したり分析したり決定したりすることについては絶対的にオルガを信じているのです。自分が考えるよりオルガが考える方がいい、その方が良い結果が出るのだと。
 これだけなら、「頭脳担当と肉体担当」といった図式になってしまいかねないかもしれません。そこに搾取構造を見るのも容易でしょう。しかし三日月は多分、それすらも超えてオルガを信じているのです。「オルガがちゃんとしてくれる」と。オルガの判断は当然自分にとっても最良である、と。そして、オルガはその三日月の視線をいつも感じているのです。「あの目は裏切れねえ」と。
 無論、オルガの三日月に対する信頼も絶対的なものがあります。物語の冒頭、劣勢の戦力で敵のモビルスーツに対峙しなければならなくなった際、彼は自らを囮として敵を誘導しつつ三日月の駆るガンダム・バルバトスを出撃させています。もし僅かでも三日月が失敗すれば、いやその出撃が遅れただけでも自分は確実に死ぬ、といった作戦だったのですが、彼は全く躊躇いませんでした。それほどに信じていたのです。
 この二人の信頼関係がどうなっていくのか、それがこの先の見どころなのではないかと思っていたりします。


 オルガがリーダーとして非凡なところは、相手の性格や思考を理解しており、それぞれに応じたフォローの仕方も心得ている点にもあります。
 例えば知恵者で参謀役、かつ穏健な性格のビスケット・グリフォンに対しては、その提案を結果として撥ね付けたあとで自分が何故そうしたのかを説明しつつ、すかさず「悪いな」「これからも力を貸してくれ」と口にしています。穏健で理性的な相手に対するフォローとしては最善のものでしょう。あるいはほとんど非差別民扱いで常にその声明を軽んじられてきた生い立ちを持つ昭弘・アルトランドに対しては事あるごとに信頼を口にし、「細かいことは言わない、お前を信じて任せる」といった態度を取ります。こういった立場の人間が何を欲しているのか、何を意気に感じるのかというのを知っているのです。
 若いながら人の使い方を心得ている、その姿を丁寧に描いている脚本の力量も大したものだと思います。


 描写の丁寧さは、戦闘にも存分に現れています。
 特に第一話に顕著だったのですが、この作品でのモビルスーツというのは希少かつ強力な決戦兵器であり、それが戦場に現れただけで一般兵は絶望するような存在です。このあたりのあまりに大きな力の差、モビルスーツの巨大さ、恐怖、絶望感、そういったものの描き方は、永野護の「ファイブスター物語」や「ゴティックメード」を思わせるものがありました。あるいは、モビルスーツ同士の戦闘音が遠雷のように轟くところなんかはアニメの「ゴティックメード」の影響もあるような気がします。
 空間戦闘の描写も巧みですし、敵のエースパイロットが三日月の弱点を看破するシーンなどはその着眼点に唸らされました。また、敵から奪ったパーツを活用していくプロセスなども、非常によく考えられていると思います。
 戦闘描写については、もうアニメを見て頂くしか無いでしょうが…見て損はない出来であることは保証します。


 とまあ、長々書いてみましたが。
 要は「面白いから是非見て下さい」ということです。あたしがこれほどまでに絶賛するテレビアニメは珍しいのですし。

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